Numeri

6/20 走れエロス

エロスは激怒した。どうしてこんな台風の夜に酒などを買いに行かねばならぬのか。エロスには酒の味は分からぬ。エロスは、まだ中学生である。勉強をし、部活をし、友人と遊んで暮らしてきた。

今日、エロスは親戚の家に泊まりで遊びに来ていた。その家の叔父は酒が無性に大好きで、酒がないと手が震えるほどだった。早い話がアル中だ。

外では、台風が猛威を揮い、轟々とけたたましい音を奏でていた。そして、叔父の大好きな酒も、その全てがなくなっていた。それでも、酒を喰らうことを諦めぬ叔父は、暴風の中を買いに行くことを決意する。

エロスと共に、嵐の中、徒歩で酒屋まで向かう叔父は、「叔父さんはな、酒がないと何も出来ないんだよ」と情けないセリフを吐く。エロスにはその言葉の意味は半分も分からなかった。

嵐は容赦なく二人に襲いかかり、前進するのもままならぬまま、それでも酒屋を目指してして前進し続けた。ふいに前方から見慣れぬ黄色い物体が飛んできた。

木々を激しく揺り動かし、大木すらもなぎ倒す風力を手にした台風は、酒屋のビールケースすらも吹き飛ばしたのだ。KIRINと書かれたプラスティックの黄色いビールケース。中にはギッシリと瓶ビールの空き瓶が入っている。余程の重量であることは明白だが、それでも嵐は軽々とそれを吹き飛ばしていた。

「危ない!」そう思ったときは既に遅く、悪魔の物体は軽々と叔父に向かって襲いかかっていた。アル中の叔父にそれを避ける余裕はなく、鈍い音と共に余程の重量であるビールケースは頭部に激突した。

頭から血を流し倒れこむ叔父。無情にも激しく雨が降り注ぐ。叔父の手は激しく痙攣しており、それが頭部に衝撃を受けたことが原因なのかアル中が原因なのかは分からなかった。

「お、叔父さん!」

暴風は、エロスの叫びをせせら笑ふ如く、ますます激しく躍り狂ふ。

エロスは覚悟した。この非常事態を叔父さんの家族に伝えねばなるまい。信じた叔父(アル中)のため、今はただ走らねばなるまい。路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のやうに走つた。

親戚の家に帰りついたエロスは、叔母、従兄弟に惨事の様子を伝える。聞くとすうっと顔色を失った叔母は、急いで110番に電話をし、救急隊を呼び寄せた。

嵐の中、タンカに乗せられて救急車に乗せられる叔父。だからいったのだ。こんな台風の夜に酒を買いに行くことなどない。危険だから止めた方が良いと言ったのに。エロスはまた激怒した。

救急車に乗り、叔母も従兄弟も、もちろん叔父も病院にいってしまった。見慣れぬ親戚の家にエロスはただ一人佇んでいた。

幼い頃から、台風が来ると無性に興奮するエロスは、まだまだ興奮冷めやらず、誰もいない親戚の家で台風の轟音に耳を傾けていた。台風の目を超え、幾分弱まったといえども勢力は甚大で、全てを飲み込みそうな音が轟々と聞こえていた。とにかく興奮する。

もっと風の音が聞こえぬものか。エロスは一番音が聞きやすいであろう部屋を選び、そっと窓際に陣取った。

台風の影響で洗濯はしたものの干せなかったのだろう。窓際には洗濯物がだらしなく干してあつた。叔父のものと思われる肌着に、従兄弟の物と思われる靴下。そして、叔母のものだろう、かわいらしいパンティエが干してあった。

バカな! 叔母のパンティエだぞ!

年の割には若く見え、評判の美人といえども叔母だ。それに年増ともいえる年齢だ。若い娘のパンティエならともかく、オバサンのパンティエで欲情するなどありえない。あってはならない。

動揺する心を落ち着かせ、なんとかリビングへと戻り、テレビをつける。そもそも見慣れぬ家で家内を徘徊するのが良くないのだ。非常識な行為を行う興奮と台風の興奮、それらが入り混じり叔母のパンティエに興奮してしまったのだ。

落ち着きさえ取り戻してしまえば何てことはない。ただの気の迷いだったのだ。叔母のパンティに欲情することなどあってはならぬのだ。いくら性欲の塊、中学生といえどもあってはならぬのだ。エロスはそう自分に言い聞かせると、カチャカチャとテレビのチャンネルを落ち着いて変え始めた。

テレビからは台風情報が流れ、今まさにこの場所を大きな渦が直撃していることを告げていた。エロスは、その画面を食い入るように貪り見ていた。

バ・・・バカな! 台風の渦が女性器にみえる!

日本列島を覆っていた台風の渦が、エロスには女性器にしか見えなかった。中心の台風の目がなんとも隠微に微笑みかけ、エロスの股間を刺激していた。

あってはならぬ、台風の渦が女性器に見えることなど、あってはならぬ。

もはや抗らうことなどできなかった。台風の興奮、叔母のパンティエ、そして女性器のような台風の渦。「中心付近の気圧は980ミリバールです」というアナウンサーのセリフも、淫猥な喘ぎ声にしか聞こえない。その全てが入り混じり、エロスのピンク色の脳髄を刺激していた。

「このエロスは、他所様の家でオナニーをしようというのか。叔母のパンティエを右手にグイと握り、嵐の風音に耳を傾け、台風情報を見ながらオナニーをしようというのか」

自問自答したが、もはやエロスには道は残されていなかった。自分の欲望の赴くまま、パンティエを手に取り、風音に耳を傾けながら、女性器の渦を眺めてオナニーをするしかない。

性に垣根などあってはならぬのだ。自分の興奮に身を任せ、興奮するものと共に、流るるままにオナニーをすればいいのだ。

私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと氣のいい事は言つて居られぬ。私は、性欲に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。オナれ! エロス。

台風の轟音が轟く中、一心不乱に自身の性器を弄ぶエロス。手には叔母のパンティエ、画面には台風情報。他所様の家の一家団欒が繰り広げられるべきリビングで行為に及んでいることが、一層エロスを興奮させた。

エロスの小さなイチモツは、あまりの興奮度から長時間刺激に耐えることなどできず、ヒヒーンと二、三度いなないた後に白濁液を放出して朽ち果てた。

背徳感をひきずりながらも、達成感で胸いっぱいだったエロスだが、性欲と性欲の塊の液を放出して幾分冷静になったからだろうか、奇妙な罪悪感がエロスを苦しめた。

あれから十年と幾年、二六歳になったエロスは、未だに台風が到来すると思い出す。台風の渦が女性器に見え、叔母のパンティエを握って他所の家でオナニーをした思い出を。風の轟音を背にオナニーをした恥ずかしい桃色の思い出を。

台風6号が九州をかすめ、エロスの住む広島にも強風をもたらした。轟々と風の音はなりやまず、テレビの台風情報も恥ずかしげなく女性器のような渦を映し出す。

まさかな、あの当時のように見るもの全てがピンク色に見えた中学生時代であるまいし、まさか二六歳にもなって台風情報でオナニーするわけがない。ましてや叔母のパンティエを思い出してするはずもない。

あの思い出は考えるだけで恥ずかしいものだ。できれば触れたくない過去なのだ。台風でオナニーなどするはずもない。考えるだけで恥ずかしいわ!エロスは、ひどく赤面した。(台風情報を見てズボンを下ろしながら)


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