出会い系サイトと対決する5
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「いやー、アツアツですね、もうアツアツ!」 アンニュイな朝に、死ぬほど眠いこのまま世界が終わればいいと呟きながら寝ぼけ眼で通勤していましたところ、とんでもなく衝撃的なフレーズが僕を襲いました。 僕は主にマイカー通勤をしつつ、カーラジオなぞを聴いているのですが、そのラジオからとんでもないセリフが飛び出したのです。 番組は、男女2人組みのラジオDJがリスナーから頂いたメールの内容を読み上げ、時には面白おかしくコメントしたり、時には大幅に脱線したり、男性DJがハッスルしちゃって「ガリクソンのガソリン」とか朝っぱらか勘弁して欲しいことをのたまったりする、そんな微妙で和気藹々とした空気が好評を博している番組なのですが、そこに送られてきた一通のメールから事件は起こりました。 「この間、彼女と夜景をみにドライブにいってきました。○○山の山頂は夜の街がハート型に見える綺麗な夜景があって最高です!夜景を見る彼女が最高にかわいかったです」 とかなんとか、もうこのメール自体も勘弁して欲しくて、僕は別に朝っぱらから夜景まる得情報なんて欲しくありませんからね。もっとこう、今日一日を生き抜くための有益な情報、それこそ、洗剤が安いとかの情報が欲しいわけですよ。なのになに、ハート型の夜景ってなんだよ、ハートっていえばデブな敵キャラじゃないか。 まあ、この投稿自体も許しがたいですが、問題はそれを受けた男DJのコメントですよ。これがもう、戦後最悪ってほどに酷い。 「いやー、アツアツですね、もうアツアツ!」 他にもっと気の利いたこと言えないのか、安い洗剤売ってる店とか教えられないのかと思いますが、ここまではまだいい。対応コメントとしてはまだまだ許容範囲レベルだ。しかし、許せないのはこの後に続いたコメントだ。 「夜景ドライブだなんてホント、アツアツですねー。アツアツすぎて車がオーバーヒートするんじゃないかなあ」 しねえよ、バカ。 あのですね、あまり言いたかないですけど、どこの世界を探してもカップルのアツアツでオーバーヒートする車なんてありませんよ。そんなの速攻でリコールですよ、リコール。「高志〜、ご飯つぶついてるぞー」パクッペロ!「芳江はカワイイなあー」「テヘ」これで車がオーバーヒート、やってられません。 あいにくですね、日本製の乗用車の技術力ってのは相当なもんですから、たとえカーセックスしようともオーバーヒートはしません。アツアツカップルでオーバーヒート、ダメ、ゼッタイ。 そんな感じで朝っぱらから憤りながら通勤していたらですね、今度は携帯電話にSPAMメールですよ。 もう僕の携帯メールアドレスが電脳世界でどんな扱いになってるのかわからないんですけど、とにかくドコドコとSPAMが届くんですよね。とにかく怪しげなサイトの広告が来たらガッツリ登録するように心がけていますから、「登録したんだから5万円払え!」「払わないなら差し押さえするぞ!」なんて請求メールはもちろんのこと、「欲求不満の人妻がアナタを待っています」とか「頭も尻も軽い女の子満載!今すぐ登録!」みたいな垂涎の一品も。きっと僕のアドレスが詐欺サイト界で流通してるんでしょうね、第二の詐欺を狙ったメールがドコドコ来るんです。 普段ならそんなある意味必死なメール群を眺めて一笑に付し、払うわけねーだろとか、そんな法律存在しねーよとか、いちいちツッコミを入れて楽しんでるのですが、ちょっと前述のラジオDJのコメントが癇に障ったんでしょうね、とてもじゃないが大らかにスルーする気もツッコミ入れる気も起きなくなっちゃいましてね、ここはいっちょ詐欺業者相手に遊んでやるかと決意しちゃったわけなんです。 職場に到着しまして、早速デスクに座って、仕事?なにそれ?と言わんばかりに届いた詐欺メールどもを吟味します。どいつもこいつも香ばしい詐欺メールで、詐欺メール博物館みたいな状態になってますが、その中でも特にスパイシーな物をチョイスします。 「ロリっこ倶楽部です。あなたは既に有料会員に登録されています。電子消費者契約法に基づき利用料金88000円請求いたします。本日中にお支払い頂ける場合は緩和措置として50000円に減額可能ですので、至急、03-XXXX-XXXX担当広川まで連絡ください。以後の減額交渉には応じられません」 とまあ、このメールからただならぬスパイシーな、あえて言うならレインボーなオーラを感じ取ってしまった僕。こんなサイトにアクセスした覚えすらなく、間違いなく架空請求の類でしょうが、ロリっこ倶楽部という名前が気に入った。そのネーミングセンスにいたく感動した。ロリっこですよロリっこ、ロリっ子とか漢字にしないところがルネッサンス級にセンスがありすぎる。 まあ、そんなのは置いときまして、特にスパイシーなのが「電子消費者契約法」という文言と、「本日中なら5万円に減額可能」と謳っている部分にあります。 まず、「電子消費者契約法」ですが、なにやらこのような法律名を併記してお金を請求されてしまいますと払わなきゃいけないような気がしてきますが、実際に法律を紐解いてみますと、実はコレは民法95条の錯誤無効の但し書きにある部分を保護した特例的措置を定めた法律になるのですが、あまり詳しくやると法律チックになって大変なのでこのへんにして、単純に言うとインターネット上での契約における勘違いや操作ミスによる契約から消費者を守るという趣旨の法律です。 つまり、消費者を守るための法律ですから、「電子消費者契約法に基づいて請求します」ってのはありえないお話でチャンチャラおかしい荒唐無稽なお話なんですよね。 きっと、小難しい法律の名前が出てると、もしかしたら払わないといけないんじゃないかって思う人もいるかもしれないというブラフなんでしょうが、こういうせせこましいことを臆面もなくやってしまう業者、きっと小動物並みに頭が悪いに決まってます。 そして、「本日中なら5万円に減額可能」という部分。88000円が一気に50000円に減るというイリュージョンです。これはもう、単純にこの業者がお金に困ってるってことじゃないでしょうか。早く騙されて振り込んでくれないともうダメ!という危機的状況に瀕しているのではないでしょうか。 僕もこの世知辛い社会で生活を営んでいて、あと500円あればハンバーグが食べられる!という危機に直面してしまう事があります。もう空腹でどうしようもなくて思考回路はショート寸前。銀行の口座を見たら899円と920円しか入ってなくてATMで下ろせない、という絶体絶命のピンチになることがあります。 本当にお金がない時の人間ってのは愚かなもので、なんとかお金を手にしたいと、899円の口座の方から手数料を引いた600円くらいを920円の口座に振り込み、1500円くらいにして1000円を下ろすという愚行に手を染める事があります。自分の口座から自分の口座に振込みとか、頭が悪すぎて目を覆うばかりです。 そんな風に危機に瀕してるんじゃないかと予想される業者ですので、ちょっと弄ってみたらすごく面白い反応をしてくれるんじゃないかと予想、早速この業者をターゲットに絞って接触してみましょう。今回のテーマは「払いたいのに色々な事情があって払えない人」という子羊のような設定です。 早速、メールに記載されていた電話番号にアクセスします。 「もしもし」 「もしもし、○○データサービスですが」 いつもそうですが、早くも鬼のように怖い声のオッサンです。軍隊の上層部みたいな声してやがった。 「あのー、料金請求のメール貰っていて、今日なら減額も可能ってあったんですけど。担当の広川さんって人らしいです」 「ああ、広川ね。少々お待ちください」 あまりの恐ろしさに小便を漏らしそうになったのですが、なんとか広川さんを出して欲しいと伝えることに成功。怖い声とは対照的な、非常に平和的な保留音が鳴り響いていました。 「お電話変わりました。広川です」 満を持して登場した広川がまた凄くて、さっきの人より数倍声が怖い。よくワイドショーなんかでヤミ金の人とか中国人窃盗団なんかが真っ暗な部屋でインタビューに答えていて、音声が物凄く重低音な物に変えられていることがあるんですけど、素でそんなレベルの声してやがった。 とにかく恐ろしいので一刻も早く電話をたたっきりたいのですが、ジャブ程度に切り出してみます。 「あのー、ナントカ倶楽部ってサイトを使ったって請求が来てたんですけど、何倶楽部だったかな、ちょっと覚えてないんですけど」 本当は「ロリっこ倶楽部」だってメールに書いてあるんですけど、広川に「ロリっこ倶楽部」と言わせたい、この怖い声で「ロリっこ」と言わせたい。そんなイタズラ心が芽生えてしまったので仕方ありません。 「ロリっこ倶楽部ですかねー」 おおー、すげえ重低音で「ロリっこ」とか言ってやがる。ダメだ、この時点で死ぬほど笑える。 「え?すいません、何倶楽部ですか?」 もう一度聞いてみたくて、分かってるくせにパードゥンみたいな意味合いでにじり寄ります。 「ロリっこ倶楽部です」 アカン、こんな人殺してるような声でろりっこ倶楽部はないわ。死ぬほど笑える。 「そうそう、そのロリっこです。使った覚えはないんですけど、何か難しい法律で払わないといけないんですよね?」 「ええ、最近は架空請求なんか多いですけど、当社は電子消費者契約法に基づいて請求してますから、裁判やっても勝ちますよ」 とまあ、どの口が言いますかって感じで堂々たる主張。裁判やっても勝つが聞いて呆れる。 「そうなんですかー、じゃあ払ったほうが得策ですね・・・」 「そうですね、早めに払ってもらえると、こちらも法的手続きを採らなくて済むので助かります」 まあ、ここで電子消費者契約法の真実を語って矛盾点を突いていっても面白くないので、あえて業者側の主張に乗りましょう。イメージとしては、もう払う気マンマンの人です。 「今日中だったら安くなるんですよね?」 「ええ、本日中なら特別減額に応じますので88000円が50000円になります」 さあ、ここで大いなる矛盾点が大登場。 僕はここまで自分の名前も電話番号も、メールアドレスも名乗ってないんですよ。つまり、業者側は僕という人物を特定というか、識別できていないのです。 では、ありえないでしょうが真っ当に利用料金を請求している業者だったらどうでしょうか。そうですね、請求金額は人によってまちまちなはずです。沢山払ってない人とかもいるでしょうし、ちょっとの料金で済む人もいるはず、皆が一律に同じ料金を請求されているってのはありえないんですよ。 なのに、広川さんは何も言わなくても「88000円」というメールに記載された利用料金を持ち出してくる。これはもう、この料金で多くの人に無差別にSPAMメールだしてる架空請求業者ですって自白しているようなものです。 「88000円が50000円に!ムチャクチャお得ですね!コレは今日払ってしまうしかないですね」 しかしまあ、そんな矛盾点を突っつきまわしても面白くありませんので、ここはあえてスルー。別方面から攻めます。 「ただ、今日払いに行きたいんですけど・・・ちょっと都合が悪くて・・・払いにいけそうにないんですよね」 ここで「払う気はあるんだけど諸事情により払いにいけない」ということをにわかにアピールします。 「是非とも本日中にお支払い頂きたいのですが・・・都合つきませんかね?」 おそらくですが、悪質業者サイドには「相手が払う気になったらその日のうちに払わせろ」という不文律でもあるのでしょうか。たぶん、時間を置いて後日、とかになると周りに入れ知恵をされたりなんかして失敗するケースが多いんでしょう、とにかくその日のうちに払わせようとしてきます。 「ちょっと時間を作って振り込みに行くくらい出来ませんかね?」 「ええ、今仕事中なんですけど、とにかく銀行が遠いんですよ。車で1時間くらいかかります。そんなに長時間抜け出せないし弱ったな・・・」 最寄の銀行まで車で1時間って、どんな隔絶された山村だよって思うのですが、ここはあえてそう主張しましょう。 「抜け出せないですかねー。今日払っていただかないと減額できないんですが・・・」 「僕は払いに行きたいんですが・・・部長がですね、睨みをきかせてるんですよ。怖い部長で僕を目の敵にするし困ってるんですよ。どうにかなりませんかね?」 なぜか、ここで部長が怖いという話にスライド、相談を持ちかけます。 「怖い部長ですか・・・事情を話して抜けさせてもらうってのはできないんですかね?」 「ええ、もう頑固者ですから。事情なんて話したらさらに睨みがきつくなりますよ。この間なんて、新入社員の女の子が家賃を振り込みに行きたいって言っただけで泣くまで怒られてましたから」 「怖い部長ですね・・・」 「ええ、怖いんですよ。広川さんのところはどうですか?」 「まあ、ウチは普通です」 なに話題に乗ってきてるんだ、広川。 「じゃあこうしましょう。お腹が痛いとか言って早退したらどうですかね?体調不良ならいくらなんでも部長だって納得してくれますよ」 と、広川から提案。なかなか面倒見がいいじゃねーか。 「わかりました。やってみます。また電話しますね」 「はい、あ、その前に振込口座を教えますのでメモしてください。○○銀行○○支店・・・振込みの際はお客様の携帯電話を入力してください。振り込み終わったら電話してくださいね」 「わかりました」 まあ、実際には、怖い部長も遠い銀行ってのも存在しなくて、自由に抜けられるし銀行も目の前にある、それどころか口座のメモすら取ってないのですが、まあ、鼻くそほじりながらしばらく時間が経つのを待ちます。で、しばらくしたら再度電話。 「あ、広川さんですか?」 「はい広川です」 「先ほどの者ですけど・・・」 「あ、振り込み終わりました?」 「いえ、実は大変なことが起こりまして・・・部長にお腹痛いと言って早退することには成功したんですけど、そしたら本当にお腹痛くなっちゃって、今トイレから離れられないんですよ、どうしよう、振り込みにいけない・・・」 「はあ、それは困りましたね」 「どうしましょうか?」 「温かいものでお腹をモミモミすると良いって聞きますけどね」 コイツは怖い声しやがってからに何言ってやがんだ。地獄の怨霊みたいな声しやがってからに「お腹をモミモミ」はないだろ、モミモミは。笑い死にさせる気か。 「早く払いにいきたいんですけど、うっ、また下痢だ。とにかく払いたいんですけど・・・えっと、何倶楽部の料金でしたっけ?」 「ロリっこ倶楽部です」 もうダメ、死ぬ。笑い死ぬ。 「とにかくお腹をモミモミしてみますね。頑張って払いに行きます」 そろそろ本格的にどうでも良くなってきたのですが、とにかくまた鼻くそほじったりしながら時間が経過するのを待ちます。で、そろそろいい頃合になってきたところでまたもや電話。広川に繋いでもらいます。 「広川さんに教えてもらったモミモミでお腹治りました!すごい!」 「そうですか。では振り込みにいけますね」 「それなんですが・・・実は・・・車のカーナビが壊れてしまって・・・銀行の場所が分からないんです」 さすがにね、ここまでくると広川君もおちょくられていることに気付くらしく 「おい、いい加減にしておけよ、テメー。払うのか払わねーのあ、ハッキリしろや」 とドスがピリリと効いた脅し文句ですよ。返して、あの優しかった広川君を返して!お腹をモミモミとか言ってた広川君を返してよ! 「払うって言ってるじゃないですか。ただ禍々しい何かが 僕を邪魔するんです!」 「こっちはな、忙しいんだよ。とっとと払えや!」 「だからカーナビが!」 「カーナビなくても銀行くらい見つかるだろが!」 「ムリムリ!カーナビ無しじゃあムリ!」 「いい加減にしとかんと大変なことになるぞ!」 「カーナビが壊れたんだから仕方ないだろが!カーナビ!カーナビ!カーナビゲーション!N・A・V・I・G・A・T・アイオエヌ!」 「ワレ、ふざけとんのか?」 「ふざけてるわけねえだろ!お腹はモミモミしてるけど!」 「殺すぞコラアアアアアアアアアアア!」 うおーこえー、広川こえー。すげえ猛り狂ってるよ。 とにかく、これ以上は広川君が高血圧でぶっ倒れそうだったので自粛。電話を切ってまた鼻クソでもほじるのでした。 でまあ、これで終わりにしようと思ったのですが、どうしても伝え忘れていた事があったので、それをやり残してこの対決は終われないと判断、再度広川君に電話をかけて 「先ほどはすいません。どうかしてました。やっとカーナビが直ったので銀行に振り込みに行きます」 「そう」 「ただ、銀行に行こうと車を走らせていたら、農道の脇にカップルがいましてね、そのカップルがあまりにアツアツなもんですから、車がオーバーヒートしちゃったんですよ、どうしましょう・・・」 と切り出したら 「ンhcv絵rにえねぴvmdfr殺すhすdfhうぇ」 みたいに、聞き取れないくらい大変怒り狂っておられました。広川がオーバーヒートするかと思った。 大満足の対決を終え、仕事も終わったので家に帰ろうと車を走らせていましたところ、本気でコンビニも何もない山間部で激烈にウンコしたくなったので、お腹をモミモミして凌ぎました。 |